23.04.26
家族に作ってあげたい、絶品パスタ
コウケンテツさんと作る
絶品おとな味パスタ
普段、料理をしない人も母の日にはきっと腕まくりをして、実家のお母さんのために料理をしたり、「ママのために料理したい」子どもたちを手伝ったり。そんな時にぴったりの、簡単だけれど華やかでおいしいパスタを、料理研究家のコウケンテツさんに習いました。
ある晴れた日の午後、コウケンテツさんのスタジオにお邪魔しました。さっそくですが、母の日にはどんな料理が喜ばれるでしょうか?
「酸味と辛味を効かせたおとな味のパスタはいかがでしょう? 我が家でもパスタは人気メニューですが、普段は子どもの好みに合わせることが多いので、母の日はぜひ大人向けに。『プッタネスカ』はアンチョビ、ケイパー、オリーブを使ったトマトベースのパスタ。見た目もおしゃれでとても喜ばれると思います」
さっそく教えてもらいましょう。材料はこちら!
プッタネスカ
◎材料
スパゲティ(リングイネ) 160g
にんにくのみじん切り 1かけ
アンチョビみじん切り 2~3切れ
ブラックオリーブの実 6個
グリーンオリーブの実 6個
ケイパー 大さじ2
赤唐辛子の小口切り 2本分
オリーブオイル 大さじ2~3
ホールトマト缶 1缶(400g)
塩 大さじ1
砂糖 小さじ1
粗びきこしょう、ディル 各適宜
では作っていきましょう!
①にんにく、アンチョビをみじん切りに。ケイパーは粗く刻みます。(包丁を使うのはここだけ!) ホールトマトはつぶしておきます。
「オリーブは丸ごと使います。食感の変化も加わって見た目もきれい」
②フライパンに1,5リットルのお湯を沸かし始めます。
③別のフライパンににんにく、オリーブオイルを入れ、弱火で熱し、3分ほどじっくり炒めます。良い香りがしてきたら、アンチョビ、赤唐辛子を加えてさっと混ぜます。
④ホールトマト、ケイパー、砂糖を加え、2〜3分煮詰めます。
「ホールトマトとケイパーは酸味が強いので、砂糖を加えて和らげます。これはイタリアの人もよくする方法で、すっぱいのが好きな方はなくても。そこはお好みで」
⑤お湯が沸いたら、塩を加え、パスタを入れます。袋の表示時間より1分短くタイマーをセット。
「28cmのフライパンはパスタがきれいに入ります。放射状に入れると、麺同士がくっつきません」
「パスタを茹でるときはいつもフライパン。鍋よりお湯が沸くのも早いし、僕の経験では吹きこぼれにくいので、少し目を離しても安心」
「パスタとソース、同時に出来上がることをイメージして進めてください」
⑥オリーブの実を入れ、パスタの茹で汁をお玉1〜2杯分加え、さらに2~3分、煮詰めます。
「茹で汁を使う!これポイントです。さる有名なイタリアンのシェフから習いました。角の立たない、素材を活かした味付けができます」
⑦パスタが茹で上がったら水気を切り、⑦のフライパンに加えて、1分ほど火にかけながらソースをしっかり絡めます。
「ソースにパンチがあるから太めの麺がよく合います。ああいい香り。個人的にも大好きなパスタなんですよね」
さあ、盛りつけです!
「一回、平らに盛って土台を作ります」
「その上に捻るようにして盛り付けます。二段階にすると崩れにくいです」
「オリーブは後から散らすときれい。好みでハーブを散らして。良い香りもおもてなしの一つ。パセリやバジルでもいいですよ」
「黒胡椒はたっぷりと。最後に追い鰹ならぬ“追いオリーブオイル”を。オリーブオイルも調味料のうち。後からかけるとフレッシュさを活かせます。完成です!」
冷えたワインと召し上がれ。
「キリッと冷えたスパークリングワインがぴったりですね。渾身の一品ですから、あとはいいお惣菜でも買ってきたら十分、素敵なテーブルになると思います」
料理はプレゼンだ!
作り始める前に材料を全部出して並べておくと落ち着いて料理ができます。使う順に並べて目で確認するだけで段取りが格段にアップしますよ。
「料理」というと特別なこと、得意ではないこととして捉えてしまうと思うので、例えば会議のプレゼンをするような感覚ですると、案外スムーズにいくと思います。
「プッタネスカ」はトマト、ニンニク、唐辛子、それぞれの味をしっかり出すのがポイント。結構パンチの効いたパスタなのですが、そこを意識するとこの料理の個性が出せるし、いいプレゼンになると思います!
片づけまでが「料理」です
あとはやっぱり、きれいに片づけてほしいんです、キッチンを。僕は料理をするより大事なことだと思っています。
料理を作って「ありがとう」と言ってキッチンはそのままだったら、ちょっと本末転倒。そこはお父さんががんばって子どもたちをリードして「じゃ、みんなで片つけよう」と。そこまでやると、お母さんも本当に嬉しいと思います。家庭料理はそこですよね、後片付けまでが大事なんです。
食卓は家族皆でつくるもの
テレビ番組の取材でアジア、ヨーロッパ各地のいろいろな家庭を訪れました。料理を作らないパパやお子さんも多いのですが、その分、テーブルセッティングをしたり、食器洗いを担当するというご家庭が多かった。「みんなで食卓を作っている感」があって、すごく素敵だなと思いました。
「ママ、今日は何を飲む?」、「ワイン」と言ったらワイングラスを用意して。それって嬉しいんですよね、作っている側からすると。これこそ、家族みんなでご飯を作るってことなんだと思いました。
母が心から喜んでくれた料理
僕が料理家として独立した後、母が東京に遊びにきたとき、冷蔵庫にあるものでナムルを4種類くらい作って、そうめんに載せて出したら、すごく喜んでくれました。
母から料理を特別に教わったことはなかったのですが、上京するときにナムルの作り方を教えてもらいました。ナムルというのは生、炒める、茹でると、全ての調理法がある上に、旬の素材をうまく活かすという点でも、「ナムルを上手につくれるようになったら料理は間違いない」と母はいつも言っていました。それで僕がささっとナムルを作って出したので、喜んでくれたのだと思います。
思い出の家族の味
子どもの頃は父が小さな工場を経営していたので、職人さんたちと僕たちの家族も毎日一緒に食事をしていました。韓国の家庭では法事が大切な行事で、その度に親戚中の女性が家に集まり、基本は半日かけて、時にはなんと二日がかり食事を作っていました。焼き魚やナムルや、子ども心に「法事の時のご飯はおいしいなあ」と楽しみにしていたのですが、今考えると、あまりにあり得ないくらい過酷! 母やおばさんたちに心から感謝しつつも、本当に大変だっただろうと思います。
中学生になったとき、部活から帰って塾に行くまで20分とか全然時間のない時に、有り合わせのもので作ってくれるチゲがすごくおいしかった。こんな短時間でおいしいものが作れる母ってすごいなと思ったことを覚えていますね。
楽しい空気が一番のご馳走
子どもを1人授かり、2人授かり、今は3人になって、昨日のことも覚えていないくらい夫婦ともども忙しい毎日です。その中でいかにメンタルヘルスを保つかはいつも考えています。子どもたちとはよく一緒に料理を作るし、みんな家のことをよく手伝ってくれています。昨年、彼が中学生になり、お弁当が始まりました。半年、お弁当作りをやってみてから家族会議を開いて、土日の夕食は家で作らないことに決めたんです。皆で相談して何かを買ってくるか、ウーバーを頼むか外食か。出費はかさみますが、もう早く週末にならないかなと(笑)。
昨日は久しぶりに焼肉を食べに行きました。嬉しくて、僕は酔っ払って、皆にうざいうざいと言われながら(笑)。お酒はほどほどにしながらも、メリハリは大事。すっかりリフレッシュして、月曜からまた「よし、弁当作るぞ」という気持ちになれました。
食卓で皆が笑顔になるには多分、何を作るか(食べるか)よりも、誰とどんな風に作るのか(食べるのか)、が大切だと考えています。世界中のいろいろな家庭を取材させていただきましたが、日本の家庭料理は、海外と比較すると、作る品数の多さやクオリティの高さなど、いろんな面でハードルがあまりに高く、作る側が楽しめる環境にないように感じます。しかも主にお母さんがたったひとりで全てをこなす、いわゆるワンオペ状態。どんなやり方がいいかは各家庭で違うと思いますが、できるだけ作る人がメンタル的に追い込まれないような、楽しく食事を作れる環境づくりをみんなで考えること。それが「家族で食卓を作る」ということに繋がるのでしょうね。
僕自身も実際、子どもの頃に何を食べていたか、あまり覚えていないんですよ。いつも大勢が集まってみんなで作って食べてワイワイ、楽しかったなという情景は鮮明に覚えています。そういう空気感が家族の味になるのかなと思います。
Photo:太田太朗
Interview / text:松本あかね
本日使った道具はこちら
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コウケンテツさん
料理研究家。旬の食材を使った手軽でおいしい家庭料理をテレビ、雑誌などで発信中。母は料理研究家の李映林さん。近著は初めての料理絵本「まねっこシェフ にぎにぎ!おにぎり」「まねっこシェフ ふわふわ!スクランブルエッグ」(主婦の友社)
https://www.youtube.com/channel/UC3p5OTQsMEnmZktWUkw_Y0A